男性不妊症外来

男性不妊症外来

精索静脈瘤
無精子症、乏精子症、精子無力症など
薬物療法(クロミッド、漢方薬、抗酸化サプリメントなど)
顕微鏡下精索静脈瘤手術(低位結紮術)
精巣内精子採取術(Simple-TESE)
顕微鏡下精巣内精子採取術(Micro-TESE)

手術実績(2023年12月末まで)

顕微鏡下精索静脈瘤手術
888
精巣内精子採取術
164

男性不妊症について

01,不妊症とは?

不妊症とは?

WHO(世界保健機関)、日本産婦人科学会ともに「避妊をしていないのに1年以上妊娠しない状態」を「不妊症」と定義しています。
本邦では、正常なカップルが避妊をしなかった場合、1年で約80%、2年で約90%が妊娠にいたると報告されていますので、妊娠を望んでいるカップルの約20%が不妊症ということになります。
2021年の報告では、新生児11.6人に1人が体外受精などの生殖補助医療で誕生し、不妊治療を経験する夫婦は6組中1組と言われています。
過去に1度も妊娠の経験がない場合を原発性不妊、過去に妊娠したことがあっても、その後1年以上妊娠しない場合を続発性不妊といいます。

02,不妊症治療の特徴は?

不妊症は身体的健康に影響のある病気ではありませんが、精神的・社会的な負担がかかります。
不妊治療に対しては個々のカップルの自己決定が診療の基本となり、パートナーの情報なしに治療を行うことはできません。
ぜひパートナーと一緒に受診してください。

03,不妊症の原因はどちらに?

不妊症の原因

女性側に原因があるケースは約40%、男性側に原因があるケースは約25%、両方に原因があるケースは約25%、原因不明が約10%とされています。
すなわち約半数で男性側に不妊症となる何らかの因子があるということになります。
近年は男性側の因子として勃起障害(ED)や射精障害、sexlessなどの性機能障害も増加しています。

04,男性不妊症の基本的な検査は?

身体検査では生殖器の視診・触診、直腸診などを行い、二次性徴の有無、外尿道口の位置、精巣の位置・大きさ、精路(精巣上体、精管、前立腺)の状態、精索静脈瘤の有無などをチェックします。
陰のう超音波検査では精巣の大きさ,精路閉塞の有無、精索静脈瘤の程度などが分かります。
精液検査では精液量、精子濃度、精子運動率などを測定しますが、精液検査の結果は様々な状況下でばらつく事もあるため、2回以上の精液検査を受けていただく必要があります。
血液検査ではホルモン(FSH・LH・テストステロンなど)に異常がないか、糖尿病などの基礎疾患がないかを調べます。

05,男性不妊症の原因は?

男性不妊症の原因は?

精子の数が少ない、精子の動きが悪いなどの造精機能(精子を造る能力の)障害が約80%とほとんどを占めています。精液中に精子がいない無精子症、精子濃度が1600万/mL未満または総精子数が3900万個未満の乏精子症、全体精子運動率が42%未満または前進精子運動率が30%未満の精子無力症、形態正常精子が4%未満の奇形精子症などがこれにあたります。ただし、この精液検査の基準値をクリアしていれば全く問題がないと言うわけではなく、自然妊娠のために必要最低限の数値として認識する必要があります。ほかの原因としては精路(精子の通り道)の通過障害が約15%、勃起障害や射精障害などが約5%とされています。

06,乏精子症・精子無力症の原因は?

精索静脈瘤は手術により治療可能な原因のひとつです。
また、精索静脈瘤は続発性不妊の男性因子として一番多いとされています、停留精巣や内分泌障害、染色体異常(Klinefelter症候群など)、射精障害(逆行性射精、糖尿病など)、精路通過障害(そけいヘルニア術後など)、悪性腫瘍の治療後(抗癌剤、放射線治療)、抗精子抗体なども原因となりますが、治療に難渋することがしばしばです。

07,男性不妊症に対する薬物療法

男性不妊症に対する薬物療法

乏精子症や精子無力症に対する薬物療法ではビタミン剤(ビタミンE、ビタミンCなど)や漢方製剤(補中益気湯、牛車腎気丸、柴胡加竜骨牡蛎湯など)が一般的に良く用いられています。
ホルモン検査に異常がなければクロミフェンを使用するケースもあります。
低ゴナドトロピン性性腺機能低下症では、ゴナドトロピン(h-FSH+hCG)を補充することにより、造精機能が改善することがあります。
他にコエンザイムQ10、Lカルニチン、葉酸、亜鉛、EPAなどが効果的なケースもあります。

精索静脈瘤について

01,精索静脈瘤とは?

精巣から流出する静脈は次第に合流して精索静脈(蔓状静脈叢)となります。
この精索静脈で血液の逆流が起こり、精索静脈内に血液がうっ滞し、静脈が拡張した状態が精索静脈瘤です。精索静脈瘤では、精巣内の血液の流れが滞り、精巣内の環境が悪化することにより、造精機能(精子を作る能力)が低下すると考えられています。精索静脈瘤は健康には影響しませんが、男性不妊症の原因となる疾患で、以下のような特徴があります。

精索静脈瘤について
思春期以降に好発し、左側に多いとされていたが、超音波検査では両側に見つかることが多い
罹患率は一般男性で約15%、男性不妊患者だと約50%以上
自覚症状を認める症例は少ないが、陰のうの違和感や鈍痛、陰のう内腫瘤の原因となる
手術による精液所見の改善率は約70%
術後の妊娠率の改善は約35%
手術により精子のDNA損傷や精巣内の酸化ストレスが改善する
非閉塞性無精子症では、精索静脈瘤手術により約10%で射出精子が出現したり、精巣内精子採取術(TESE)における精子採取率が10数%改善する可能性がある

02,精索静脈瘤手術について

精索静脈瘤に対する手術療法は男性不妊の治療法として有用性の高い方法です。
精索静脈瘤手術では、病的な精索静脈をすべて切断し、逆流しないようにする事が手術の基本手技です。
精索静脈瘤の手術方法は、開放手術である高位結紮術、腹腔鏡下精巣静脈結紮術、顕微鏡下精索静脈瘤手術(低位結紮術)に大別されますが、顕微鏡下精索静脈瘤手術が合併症や再発率が少なく、治療効果に優れた方法として認識されています。
顕微鏡下精索静脈瘤手術は拡大した視野で手術を行えるため、動脈やリンパ管を温存できる可能性が非常に高く、より確実に静脈のみを結紮する事ができます。顕微鏡下精索静脈瘤手術は傷が小さく、術後の痛みの程度も軽いため、局所麻酔による日帰り手術も可能です。
自験例での手術の効果は、痛みなどの自覚症状は約95%の患者さんで改善し、男性不妊症に対し精索静脈瘤手術を行った場合は約70%の患者さんで運動精子が増加します。
手術による合併症や再発のリスクは以下のとおりです。

痛み:通常は鎮痛剤の使用で改善し、術後数日で軽減しますが、まれに術後の痛みが長く続く事があります
感染:まれに術創が化膿する事があります。予防のため抗生剤を使用します
術後出血:まれに再手術が必要になることがあります(0.1%未満)
精索静脈瘤の持続・再発:手術を行っても精索静脈瘤や症状が残存したり、手術後いったん消失した精索静脈瘤や症状が再発することがあります(1.5%未満)
陰のう水腫:術後、精巣周囲にリンパ液が溜まり、陰のうが腫れることがあります(0.5%未満)。程度が軽ければ自然に消失しますが、まれに手術が必要になる場合もあります
精巣萎縮:非常にまれですが、術後しばらくたってから精巣が萎縮する可能性があります(0.1%未満)
精液所見の悪化:非常にまれですが、術前に比べて、術後の精液検査の結果が悪くなる事があります。このようなケースでは精索静脈瘤手術との因果関係はないと考えられています

03,精索静脈瘤手術に対する当クリニックの考え方

精索静脈瘤は男性不妊症と診断された方の約半数以上に見つかり、治療により治す事のできる数少ない病気の1つです。
治療法としては顕微鏡下精索静脈瘤手術(低位結紮術)が推奨されていますが、当クリニックでは局所麻酔下の日帰り手術として行っています。
当クリニックでは2016年9月の開院後、2023年12月末までに888例の顕微鏡下精索静脈瘤手術を行っていますが、問題となるような合併症は経験しておりません。
全身麻酔ではなく局所麻酔を選択する理由として、①麻酔のリスクが少ない、②治療費の負担が軽くなる、などが挙げられます。
当クリニックでは局所麻酔のみではなく、静脈麻酔を併用するため、手術中は基本的に眠っていただけます。
また、当クリニックでは他施設に比べて、両側に手術を行う症例が多く、その理由を質問される事があります。
精索静脈瘤は視診や触診で程度を分類する古い方法が現在でも主流であり、超音波検査は補助的な位置付けです。
しかし、視診や触診は客観性に乏しい面もあり、当クリニックでは精索静脈瘤を確実に描出できる超音波検査による診断を重要視しています。
当クリニックでは精索静脈瘤を診断する際に泌尿器科専門医と超音波専門医の両方の資格を持つ医師が超音波検査を入念に行っています。
そのため、他施設では見落とされたものが、当クリニックでは超音波検査で確認される事があります。
最近では以下に示すとおり、程度の軽い精索静脈瘤でも手術を行った方が治療成績が良い、両側性の場合は片方の程度が軽くても両側に手術を行った方が治療成績が良い、との報告が散見されます。

精索静脈瘤が触知できた場合、超音波検査で確認するべきである(EAU Guidelines on Male Infertility 2019)
丁寧な診察と陰のうUSを施行すると、精索静脈瘤は左だけではなく、右にも確認される事が多い
(Varicocele: a bilateral disease.Fertility and Sterility. 2004; 81: 424)
顕微鏡下精索静脈瘤手術を施行すると、総運動精子数の改善においてクリニカル群とサブクリニカル群は同等であり、改善の程度の割合においても同等であった
(The Impact of Microsurgical Repair of Subclinical and Clinical Varicoceles on Total Motile Sperm Count: Is There a Difference? Urology. 2018; 120: 109)
精索静脈瘤が両側(左がクリニカル,右がサブクリニカル)の場合、両側に手術を施行した方が治療効果は良好であった
(Bilateral is superior to unilateral varicocelectomy in infertile males with left clinical and right subclinical varicocele: a prospective randomized controlled study. International Urology and Nephrology 2018; 50: 205)

当クリニックにおいても、他施設で左精索静脈瘤に対する顕微鏡下低位結紮術を施行され、効果が不十分だった症例に超音波検査を行うと右にも精索静脈瘤が確認され、右精索静脈瘤に対する顕微鏡下精索静脈瘤手術を施行した結果、さらに精液所見が改善した症例を経験しています。 そのため、当クリニックでは超音波検査で両側に精索静脈瘤を認めた場合、両側の手術をお勧めしています。 当クリニックでは生殖医療(不妊治療)を進めて行く上で、男性もできるだけベストの状態に近づくように治療をした方が良いと考えています。 その方がパートナーである女性側の負担が軽くなる可能性があるからです。

無精子症

無精子症

無精子症の頻度は100人に1人で、決してめずらしいものではありません。
精巣内での造精機能(精子を造る働き)は正常ですが、精路(精巣上体、精管、射精管)の通過障害により精液中に精子が出て来れない閉塞性無精子症(無精子症の約15 %)と、精巣での造精機能障害や染色体異常などが原因の非閉塞性無精子症(無精子症の約85%)に分けられます。
無精子症の場合でも、精巣内精子採取術(TESE)で精子を採取できれば、顕微授精(ICSI)で挙児が得られる可能性があります。
TESEによる精子採取率は閉塞性ではほぼ100 %、非閉塞性では約20~50 %と言われていますが、術前の検査で精子採取の有無を判断することは非常に困難です。

高度な精索静脈瘤がある場合、精索静脈瘤手術を先行させることにより、射出精子が出現する可能性が約10%ある事やTESEにおける精子採取率が10数%改善するとの報告があります。
触診などの診察、陰のう超音波検査、ホルモン検査(FSH、LH、テストステロン)、染色体検査(G-band)を行えば閉塞性であるか非閉塞性であるかはある程度予想することができます。
一方で、非閉塞性無精子症には精巣内での精子形成が全くない場合と精巣内での精子形成がわずかで、精液内に出てこない場合に大別されますが、どちらであるかを術前に判別することは非常に困難です。しかしながら、精子形成の可能性が0%である場合は術前の血液検査である程度予測することができます。そのために必要な検査はY染色体微小欠失(AZF)検査ですが、AZF a因子またはAZF b因子の完全欠失の場合は精子採取の可能性が0%と考えられています。

精子DNA断片化指数検査

精子DNA断片化指数検査

精子DNA断片化指数検査(精子DFI検査)は精子のDNA損傷の程度を調べる検査です。
精子のDNA損傷の割合が高い場合は、精子数や精子運動率などの一般的な精液検査で異常がなくても、流産率が高くなったり、受精率や妊娠率が低くなると報告されています。
以下に当てはまるケースでは精子DFI検査を受ける事が推奨されています。

男性やパートナーに異常がないのに流産を繰り返す
精液検査で異常がないのに人工授精や体外受精、顕微授精でも妊娠に至らない

精子DFI検査で異常があった場合、生活習慣の改善や抗酸化サプリメントの摂取、精索静脈瘤の治療などにより改善できる可能性があります。
精子DFI検査は保険適用外で、検査料は16,500円(一般精液検査を含む)です。

泌尿器科