精索静脈瘤とは?
精巣から流出する静脈は次第に合流して精索静脈(蔓状静脈叢)となります。
この精索静脈で血液の逆流が起こり、静脈が拡張し、精索静脈内に血液がうっ滞した状態が精索静脈瘤です。
精索静脈瘤では精巣内の血液の流れが滞り、精巣内の環境が悪化することにより、造精機能(精子を作る能力)が低下すると考えられています。

精索静脈瘤は健康には影響しませんが、男性不妊症の原因になりえる疾患で、以下のような特徴があります。
●思春期以降に好発し、左側に多い
●罹患率は一般男性で約15 %、男性不妊患者だと約40 %以上
●陰嚢の違和感や鈍痛、陰嚢内腫瘤の原因となる
●手術による精液所見の改善率は約70 %
●術後の妊娠率の改善は約 35 %
●手術により精子のDNA損傷や精巣内の酸化ストレスが改善する
●非閉塞性無精子症では、精索静脈瘤手術により 5 - 10 %で射出精子が出現したり、精巣精子採取術(TESE)における精子採取率が10数 %改善する可能性がある
精索静脈瘤の手術について
精索静脈瘤手術では、病的な精索静脈をすべて切断し、逆流しないようにする事が手術の基本手技です。
精索静脈瘤の手術方法は開放手術である高位結紮術、腹腔鏡下精巣静脈結紮術、顕微鏡下精索静脈瘤手術(低位結紮術)に大別されますが、
顕微鏡下精索静脈瘤手術が合併症や再発率が少なく、治療効果に優れた方法として認識されています。
顕微鏡下精索静脈瘤手術は拡大した視野で手術を行えるため、動脈やリンパ管を温存できる可能性が非常に高く、より確実に静脈のみを結紮する事ができます。
顕微鏡下精索静脈瘤手術は傷が小さく、術後の痛みの程度も軽いため、
局所麻酔による日帰り手術も可能です。
自験例での手術の効果は、痛みなどの自覚症状は約95%の患者さんで改善し、
男性不妊症に対し精索静脈瘤手術を行った場合は約70%の患者さんで運動精子が増加します。
手術による合併症や再発のリスクは以下のとおりです。
●痛み:通常は鎮痛剤の使用で改善し、術後数日で軽減しますが、まれに術後の痛みが長く続く事があります
●感染:まれに術創が化膿する事があります。予防のため抗生剤を使用します
●術後出血:まれに再手術が必要になることがあります(0.5%未満)
●精索静脈瘤の持続・再発:手術を行っても精索静脈瘤や症状が残存したり、手術後いったん消失した精索静脈瘤や症状が再発することがあります(1.5%未満)
●陰嚢水腫:術後、精巣周囲にリンパ液が溜まり、陰嚢が腫れることがあります(0.5%未満)。程度が軽ければ自然に消失しますが、手術が必要になる場合もあります
●精巣萎縮:非常にまれですが,術後しばらくたってから精巣が萎縮する可能性があります(0.5%未満)
●精液所見の悪化:非常にまれですが,術前に比べて,術後の精液検査の結果が悪くなる事があります.このようなケースでの精索静脈瘤手術との因果関係は明らかではありません